寛ぎブログ

2026.10.22更新

東洋医学・経絡とツボの物語

胃経 壱
承泣(しょうきゅう)

― 目と全身をつなぐ、胃経最初のツボ ―

足陽明胃経 ST1 / CHENGQI

目が疲れる。涙が出る。目の周りが重だるい。

私たちは普段、こうした症状が出ると 「目そのもの」に原因があると考えます。

もちろん、現代医学では眼球や涙液、 角膜、結膜、視神経などの状態を 確認することが大切です。

一方、東洋医学では古くから、 目と身体全体の関係にも注目してきました。

今回ご紹介する承泣(しょうきゅう)は、 足陽明胃経に属する45穴のうち、 最初に位置するツボです。

胃の経絡なのに、なぜ目から始まるのでしょうか。 その意味を、古典と現代医学の両方から 考えていきます。

一、承泣とはどんなツボ?

承泣は「しょうきゅう」と読み、 国際的な経穴番号では ST1と表されます。

「承」は受けること、 「泣」は涙を意味します。

涙を受け止める場所を連想させる名前で、 眼のすぐ下に位置しています。

古典的には、涙が出る、目が赤い、 目の周囲に不快感があるといった状態と 関係づけられてきました。

ただし、古典に記載された適応と、 現代の臨床試験で効果が確認されていることは 同じではありません。

承泣の基本情報
  • 経絡:足陽明胃経
  • 経穴番号:ST1
  • 読み方:しょうきゅう
  • 位置:瞳孔の真下、眼球と眼窩下縁の間
  • 胃経の第1穴
  • 眼の周辺に位置する経穴

二、承泣の場所はどこ?

承泣は、正面を向いたときの 瞳孔の真下にあります。

正確には、眼球と、 眼窩(眼球が収まっている骨のくぼみ)の 下側の縁との間です。

WHOの標準経穴位置でも、 この位置が示されています。

一般的な目の下の美容マッサージで触れる場所よりも、 眼球に近い非常に繊細な部位です。

重要:自分で強く押さないでください

承泣は眼球のすぐ近くにあります。 眼球や周辺組織を傷つける危険があるため、 強い指圧や押し込みは避けてください。

また、自分で鍼を刺すことは 絶対にしないでください。 眼の周囲への刺鍼は特に高度な安全管理が必要です。

三、胃の経絡なのに、なぜ目から始まる?

ここが胃経の興味深いところです。

胃という名前から、 お腹や消化器だけを通る経絡を 想像されるかもしれません。

しかし、足陽明胃経は 顔から足先まで広く分布する経絡です。

顔・目の下(承泣)↓ 頬・口の周囲 ↓ 首・胸 ↓ 腹部 ↓ 太もも・膝 ↓ すね・足の甲 ↓足の第2趾(厲兌)

※上記は45経穴の主な体表上の配列を 簡略化したものです。 古典的な胃経の流注には、 鼻の周囲から始まる経路や、 顔・体幹・脚に分かれる支脈もあります。

胃経は単に胃袋だけを表すものではなく、 東洋医学独自の身体観に基づく つながりとして整理されています。

古典的には、飲食物から得られる 気血の生成や、全身を養う働きも、 脾胃の概念と深く関係すると考えます。

そのため、顔の症状と消化・栄養状態を 一緒に捉える考え方が発展しました。

ただし、胃経という経絡が 現代解剖学で一本の神経や血管として 確認されているわけではありません。

経絡は伝統医学上の概念であり、 現代の解剖学的構造とは 区別して理解する必要があります。

四、承泣と目の症状の関係

古典的な鍼灸の文献では、 承泣は次のような目の状態と 関連づけられてきました。

  • 涙が出やすい状態
  • 目の充血や腫れ
  • 目の周囲の不快感
  • まぶたのぴくつき
  • 視覚に関係する不調

現代では、パソコンやスマートフォンの 長時間使用による眼精疲労に 関心を持つ方も多いでしょう。

しかし、 承泣への刺激だけで 充血や視力低下が治ると 証明されているわけではありません。

眼の症状にはさまざまな原因があり、 病気によって必要な治療も異なります。

五、現代医学から見る目の疲れ

目の疲れは、ひとつの原因だけで 起こるものではありません。

① 近くを見続ける負担

スマートフォンやパソコンを長時間見ると、 近くにピントを合わせる作業が続きます。

その結果、目の疲労感や 一時的な見えにくさを感じることがあります。

② 涙液やまばたきの変化

画面を集中して見ていると、 まばたきが減り、 目の表面が乾燥しやすくなることがあります。

ドライアイでは乾燥感だけでなく、 異物感や涙が多く出る症状が 生じる場合もあります。

③ 首・肩の筋肉への負担

長時間同じ姿勢を続けることで、 首や肩の筋肉に負担がかかります。

目の疲れとともに首肩のこりや 頭痛を訴える方もいます。

ただし、首肩のこりが すべての眼症状の原因というわけではありません。

④ 眼の病気が隠れている場合

結膜炎、角膜の病気、緑内障、 眼内の炎症などでも 充血や痛み、見えにくさが起こります。

症状が続く場合や視力に変化がある場合は、 単なる疲れと決めつけず、 眼科で原因を確認することが大切です。

六、承泣の鍼灸に科学的根拠はある?

鍼灸全体については、 一部の慢性疼痛や頭痛などを中心に 臨床研究が進められています。

一方、目の疾患に対する鍼灸の効果は、 疾患ごとに研究の量や質が異なります。

特に、 承泣という1つのツボだけの効果を 他の治療から切り離して確かめる 質の高い研究は十分ではありません。

鍼灸の作用には神経系への影響などが 研究されていますが、 その仕組みがすべて解明されたわけではありません。

当院では、古典の知識を大切にしながらも、 科学的に確認されていない効果を 断定することは避けています。

また、眼科で必要な検査や治療を 鍼灸で置き換えることはできません。

七、こんな目の症状は眼科を優先

次の症状は早急な医療機関の受診が必要です。
  • 突然、視力が低下した
  • 急に視野の一部が見えなくなった
  • 強い眼痛がある
  • 突然、物が二重に見える
  • 急激な充血に痛みや見え方の異常を伴う
  • 強い頭痛、吐き気を伴う目の痛み
  • 目の外傷や異物による症状

突然の視力低下、視野欠損、 激しい眼痛などでは、 眼科救急を含めた緊急の診療が必要です。

突然の複視に加えて、 ろれつが回らない、手足に力が入らないなどの 症状がある場合は、 脳卒中なども考慮して救急要請してください。

鍼灸やセルフケアで様子を見て 受診を遅らせないでください。

八、目が疲れたときの日常養生

承泣は眼球に近いため、 強く押すセルフケアはおすすめしません。

日常では、目に直接負担をかけない 方法から始めましょう。

  • 画面作業の合間に休憩を取り、 遠くを見る時間を作る
  • 意識してまばたきをする
  • 画面の明るさや距離を調整する
  • 首肩を無理のない範囲で動かす
  • 十分な睡眠を確保する
  • 乾燥が続く場合は眼科で相談する

小さな習慣の積み重ねが、 目の負担を減らす助けになります。

九、鍼灸治療院 寛ぎが大切にしていること

当院では、目が疲れるというお悩みに対しても、 目の周辺だけでなく、 身体全体の状態を確認することを大切にしています。

例えば、次のようなことです。

  • 睡眠の質や睡眠時間
  • 首や肩のこり
  • 日常的な疲労の蓄積
  • 食欲や食事の状態
  • 便通や胃腸の調子
  • 手足の冷え
  • 生活習慣やストレス

東洋医学では、こうした情報を 気血・陰陽・臓腑・経絡という視点で 総合的に考えます。

ただし、これらを確認することによって 眼科疾患の有無を判断できるわけではありません。

必要に応じて医療機関での 検査や診療を優先しながら、 鍼灸で対応できる範囲を検討します。

当院の全身鍼灸

「調和陰陽・疏通経絡・調整臓腑」

お悩みの部位だけでなく、 全身の状態を確認しながら 東洋医学的な視点で施術を組み立てます。

施術時間:90分程度
料金:11,000円(税込)
美顔鍼付き

※施術内容は体調や安全性を考慮して判断します。 承泣への刺鍼を必ず行うという意味ではありません。

十、まとめ ― 目から始まる胃経の物語

承泣は、足陽明胃経45穴の 第1穴にあたるツボです。

目のすぐ下という場所から、 古典では涙や充血、眼周囲の症状と 関係づけられてきました。

そして胃経は、顔から首、胸、腹、 脚、足先へと続いていきます。

この流れは、東洋医学が身体を 部分だけでなく全体として捉えてきたことを 象徴するものともいえるでしょう。

一方で、古典的な考え方と 現代医学で証明された事実は 区別して理解する必要があります。

とくに承泣は眼球に非常に近いツボです。 安易に押したり刺したりせず、 眼の異常があるときには 適切な医療機関での診察を優先しましょう。

NEXT ACUPOINT
胃経 弐 四白(しはく)

次回は、承泣の下に位置する 「四白(ST2)」をご紹介します。

顔面の神経や筋肉との関係も交えながら、 東洋医学と現代医学の両面から解説します。

ACUPUNCTURE CLINIC KUTSUROGI

身体を、全体から見つめる。

目の疲れだけでなく、 首肩のこりや慢性的な疲労など、 身体の不調についてご相談ください。

鍼灸治療院 寛ぎ
完全予約制

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※突然の視力低下や激しい眼痛などは 鍼灸の予約よりも医療機関への受診を 優先してください。

参考資料・医学的情報について

1. WHO Regional Office for the Western Pacific, WHO Standard Acupuncture Point Locations in the Western Pacific Region. ST1(承泣)の標準位置。

2. WHO International Standard Terminologies on Traditional Medicine in the Western Pacific Region. 足陽明胃経の経路と経穴数。

3. NIH / NCCIH, Acupuncture: Effectiveness and Safety. 鍼灸の科学的根拠と安全性。

4. NIH / NCCIH, Eye Conditions and Complementary Health Approaches. 眼疾患に対する補完療法の根拠と注意事項。

5. NHS, Vision Loss / Double Vision / Eye Pain. 緊急性を伴う眼症状について。

本記事は一般的な健康情報です。 診断や治療の代わりとなるものではありません。 伝統医学上の説明と現代医学的な知見は 区別して記載しています。

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