脳卒中の後遺症でよく聞かれるお悩みのひとつに、
「手が開きにくい」
「指が曲がったままになりやすい」
「力を抜いているつもりでも、手を握り込んでしまう」
というものがあります。
ご本人にとっては、物をつかむ・離すといった日常動作にも関わるため、とても大きなお悩みです。
今回は、なぜ脳卒中後に手が開きにくくなるのか、そして鍼灸ではどのような点を確認しながら施術を考えていくのかについてお話しします。
なぜ手を握り込んでしまうのか
脳卒中では、脳の損傷によって手足を動かす指令がうまく伝わりにくくなることがあります。
その結果、単純に「力が弱くなる」だけではなく、筋肉の緊張が強くなったり、自分の意思とは関係なく特定の筋肉に力が入りやすくなったりすることがあります。
特に手では、
指が曲がりやすい
親指が手のひら側に入りやすい
手首が曲がりやすい
肘まで一緒に曲がりやすい
といった状態が見られることがあります。
これは「本人が力を入れているから」ではありません。
力を抜こうとしても、筋肉の緊張をうまくコントロールできないために起こることがあります。
手だけを見ればいいわけではありません
「手が開かない」というと、どうしても手や指だけに注目しがちです。
しかし実際には、肩・肘・手首・指までがひとつの動きとして影響し合っています。
たとえば、
肩が強く内側に入っている
↓
肘が曲がりやすくなる
↓
手首や指にも緊張が入りやすくなる
というように、腕全体の状態が手の動きに影響することがあります。
そのため当院では、指だけではなく、
肩の動き
肘の曲がり方
前腕の緊張
手首の位置
指の動き
左右差
なども確認します。
鍼灸ではどこを見るのか
鍼灸では、動かしにくい場所だけに鍼をするとは限りません。
筋肉の緊張が強い部分や、動きの悪い関節周囲、首や肩の緊張なども確認しながら施術を組み立てます。
たとえば、
肩から腕にかけての緊張
前腕の硬さ
手首まわり
指の付け根
首や肩周辺
など、その方の状態によって施術する場所は変わります。
また、強い刺激を加えればよいというものではありません。
脳卒中後の身体では、刺激に対する反応も一人ひとり異なります。
そのため、身体の状態を確認しながら無理のない刺激量で進めることが大切です。
「開く練習」と「使う練習」
手が開きにくい場合、「とにかく指を伸ばす」だけではなく、実際の生活動作につなげていくことも重要です。
たとえば、
タオルをつかむ
コップを持つ
物を置く
手のひらを開いて机につく
など、リハビリの中では実際の動作練習が行われます。
鍼灸はこうしたリハビリの代わりになるものではありません。
身体の緊張や動かしにくさに対するケアを行いながら、リハビリで実際の動作を繰り返していくことが大切です。
「無理に開く」は注意が必要です
ご家族が「少しでも手を開かせてあげたい」と思い、強く指を伸ばそうとすることがあります。
しかし、痛みを我慢しながら強く伸ばすと、かえって筋肉の緊張が強くなることもあります。
特に、
強い痛みがある
関節が硬くなっている
腫れがある
肩まで痛みが出る
といった場合は、自己判断で無理に動かさず、医師やリハビリ専門職に相談することが大切です。
小さな変化を大切に
脳卒中後の回復は、一気に大きく変わるとは限りません。
「昨日より少し力が抜けた」
「前より手のひらが開きやすい」
「物を離しやすくなった」
そうした小さな変化を積み重ねていくことも大切です。
鍼灸治療院 寛ぎでは、手だけを見るのではなく、肩・腕・手首・指まで含めた身体全体の状態を確認しながら施術を行っています。
病院での治療やリハビリを継続しながら、身体のケアのひとつとして鍼灸をご相談いただけます。
次回予告
第3話
脳卒中後の「足のつっぱり」「歩きにくさ」はなぜ起こる?
歩くときに足が前に出にくい、膝が突っ張る、つま先が引っかかる。
次回は、脳卒中後によく見られる「足のつっぱり」と歩行について詳しくお話しします。

